.  のだおいだけ 標高:705.6m(三角点梯子沢705.62m) 曲がれば則ち全たし:曲がっている木は実用にならない。しかし、そのために伐採をまぬがれ、かえって樹木としての生命を全うすることができる。人もあまり役にたつと、使われすぎて、自分の真の発達をなしえないものだ。は自然に法る:すべては自然にのっとっている。草木の生えるのも自然である、春夏秋冬の移り変わるのも自然である。人間の踏み行うべき道も、やはりこの自然にのっとるのが最もいい。
林業の発達する緩斜面の丘陵性山地を行く

 【三角点: 点名 梯子沢 種別等級 二等三角点 地形図 室蘭−濁川 世界測地系 緯度 42°6′48″.2157経度 140°18′27″.3609標高 705.62m 平面直角座標系(X) -209567.840m (Y) 4763.266m 履歴 2005/08/25] 所在地 二海郡八雲町字落部 点の記図 なし AY00043S:J1UpXp】

 2007.02.10/2名→函館c34m5:30桜野温泉(わらび野)車デポ(搬出路除雪終点)c220m7:29→c270m7:45→c310m8:00→国有林界境界管理歩道着(尾根分岐)c295m8:30→c320m8:45→ピーク508m9:07-9:21→c540m9:45山頂10:12-11:10→550m11:15→c450m11:45c340m12:30→c345m12:45→車デポ着c220m13:08 往距4.5km昇+635m-135m】

 野田追岳は三角点名「梯子沢」にある。山頂は北西から梯子沢、南東から梯子沢の両沢の源流にあたる。同名はこればかりではない。北に釜別沢、東に釜別川だ。同様に下二股川も落部と野田追の両側にある。これはどうしたことか分からない。山頂に至る夏路は、野田生御料と落部御料の境界の名残の刈り払われた防火線が利用される。山道としては立派な幅が維持されている。河川名と山名が「野田追」、集落名が「野田生」だ。上流の集落「桜野」、中間に「桜野」、下に「桜野」、対岸の上流に集落「わらび野」、中間に「桜野温泉」、下に「わらび野」の地名がある。地形図に「サーどうだ!」と言わんばかりに並んでいる。どうも、部外者には分からない地名になっている。】

 コースの地質は、第2段丘の隠れ断層上に桜野温泉がある。温泉の西側の八雲層と断層界をなす東側の下流域に国縫層相当の広く分布するプロピライト域だ。コースの大部を占める硬質頁岩の八雲層(円錐形の前ピークも同地層)だ。緩斜面が発達する八雲層に取り囲まれるようにある石英斑岩が野田追岳の山体を形作っている。途中に粗粒玄武岩の小岩脈も現れる。】

 温泉名 野田生(桜野) 地名 山越郡八雲町 深度(m) 803.12 温度(℃) 78.8 流量(l/min) 655.3 pH 6.7 泉質 Na-Cl・HCO_3】



野田追岳は、野田追川と落部川を分つ分水嶺にある。一昨年秋季に日本山学会北海道支部の例会に同行して訪れた山でもある。その時は下二股川沿いの旧国策パルプ社有地(現:日本製紙株式会社旭川)の林道を辿り分水嶺まで車で運ばれ、道程1300m高距250mばかりのお散歩で山頂に立てた。ピークの野田追岳は、上に記したように三角点の点名は「梯子沢」であるが、南と北に流れる沢名が同じく梯子沢である。このことで混乱が起きないのも不思議だが、野田追川流域と落部川流域の両側に同名の沢名などが地形図上に目立つのはどうしたわけであろうか。戦前の野田追御料と落部御料の境界にあった山で、現在は国有林が管理する山と会社有林との界をなしている。境界を管理する幅広く刈払われた歩道は「境界管理歩道」とも呼ばれている。落部川からも野田追川からも幅2〜3mの道幅で山頂まで今も立派に管理されていることを知り、同行のS氏はしきりに感心していた。

桜野温泉を登山口にして、野田追川に沿って国有林界にあたる尾根取り付きまで「わらび野」原野の道路を辿る通常の雪山のコースを予定していた。下車した地点で山越森林組合のおじさんから「搬出路が1kmほど野田追岳に向っている」との情報を得た。通常のコースの様子を知っておきたかったから、ちょっと躊躇したが、折角の助言に流されて独立標高点278mを越えた辺りまで車を進めた。搬出路であるからかなりの傾斜のブル道だ。早朝で、まだ凍結道路になっているからトラブルはなかったが、融解する午後の帰路がやはり気になった。

下二股川との分水嶺の・366mまでワカンも着けず一気に駆け上がった。原生的天然林の面影を持つ森林だった。ぴりりと冷えた朝だから、ぬかってもプラブーツのトップ程度である。ワカンも不要なけり込みだけで登れたこともあって、歩き出しの喘ぎながらであっても、なかなか気分の良い斜面であった。三つの小さなアップダウンはあるが、ほぼ定高の分水嶺を西進して所定の国有林界の尾根に至る。途中で小さな鞍部にウダイカンバが多く生育しているのを発見したり、太径のブナの地衣類模様を楽しんだり、俺の好きなブナ林のヤセ尾根もあった。砂蘭部岳・小鉾岳を右手に野田追岳を左手に遠望しながら、尾根上に国策パルプKK社有地(現:日本製紙株式会社(十條製紙、東北振興パルプ(1968年合併)、山陽国策パルプ(1993年合併)、大昭和製紙(2003年合併)の4社))の境界見出標をいくつも発見できた。ここの分水嶺の積雪はヤセ尾根で30cmくらいだった。

国有林野の境界管理歩道は夏山の登山コースとして利用されているようだ。しかし、桜野牧場から橋のない野田追川を渡る覚悟はいる。冬のこの尾根ルートを辿った登高は、前にも述べたようにしっかりした刈り幅でできており、木立もブッシュもなく、ルートファイティングもいらないから、ただただ雪面を前進することに精神を集中させながらもおおいに森林風景もあれこれと探勝できた。国有林野の境界見出標も随所に現れてきた。手入れが待たれているトドマツ植林地やダケカンバの一斉林、択伐跡地など道南の林業スペースとして高く評価できる緩斜面の発達した新第3期の八雲層域であった。

登り返しのきつい円錐形の・508m前ピークも、急登を覚悟していたから、テンの足痕を踏みながら難なくピークに立てた。胸を突く斜面を右を行こうか左を行こうかとルートに迷ったときはやはり動物たちの足痕は間違いなかった。急登を避けて、ピークの向こうの鞍部目掛けてトラバースも考えたが、あれこれと思い悩まず偶直にテンさんのように直登・直下降でここはよかった。コルから70〜80mを登り返すと野田追岳を目の前にした広大な台地だった。ダケカンバを主とする疎林が広がっていた。「渡島支庁発注・保安改良事業H8年植林アカエゾマツ樹下植栽地」の標識どおり、高さが2m程の健全な樹高のアカエゾマツが整然と並んでいた。(会社有林に渡島支庁が植林を発注する→これは何だろう?財産形成に国費?)

ヒマラヤンH氏のピッチに負けじと、最後の頑張り斜面のラッセル後をプラブーツ上縁までぬかりながらも追う。ピッケルがほしくなる、ビブラム底の模様も付かないバーンを通過して突然開けた裸の山頂に飛び出た。落部川上流域は銀婚湯を要に扇状に広がり、同じように野田追川上流の流域は桜野温泉を要に扇状の広がりを見せている。地質図を見ると野田追川側は八雲層に色塗られ、落部川側は黒松内層に色塗られている。丘陵性山地が広がっているわけだ。両河川の上流域の広がりの真ん中に我々は立っている。南は狗神岳、西に乙部岳、紋内・突符・小鉾・砂蘭部・横山を巨大な円形劇場の真ん中にいる錯覚に囚われていた。差し渡し25km、360度の大展望を十分楽しんだ。秘峰の雄鉾岳、元小屋沢山、沖沢山、スルカイ、ササマクリ山等の白いピーク群にもあれこれと話題が広がった。風も全くない。二等三角点からの展望にうっとりしすぎたか、山座同定やら思い出やらでやや小1時間も山頂に滞在してしまっていた。通信では函館は小霙らしい。北の長万部上空も暗いから、ここの盆地だけが明るい空だった。

クマゲラの鳴きと囀りの区分は分からないが、波状に飛翔しながら鳴き、立木に止まりながら鳴き、ひきりにこれを繰り返していた。知床問題の時に朝日の本田勝一と営林署長の論争を思い出した。本田は「知床の2月の山行で若き日に聞いた」署長は「クマゲラのドラミングは繁殖期にするものだから冬にドラミングとは不思議?」。はたしてわらび野では如何か!!!と耳を傾けたが、こちらは同行のH氏もいる。そう長居はできない。確かめずに斜面を駆け下りた。心なしか、立木に止まっての鳴き声は、確かに恋いこがれて相手を求めている声だ。凍結道路を利用した伐採搬出作業も今が最盛期か。より詳細は北海道と越後の山へ。

←@中二股川と野田追川の定高分水嶺を小鉾・砂蘭部を右に見て進む。










→A同嶺に多数のウダイカンバ:同分水嶺に「国策パルプ社有地」の境界見出標があった。






←B国有林野の取付き尾根から砂蘭部岳遠望:トドマツ植林地・・・生産力の高い八雲層域の緩斜面の様子










→C台地手前の急登を行くヒマラヤンH氏:境界歩道を行く






←D標高510m台地:アカエゾマツ樹下植栽…渡島支庁発注の保安林改良事業(H8植)…右側国策パルプ社有地…左側は幅広く刈り払われている国有林の境界管理歩道








↓E台地から見る野田追岳











←E-s固い斜面を通過して山頂へ



→F展望1:砂蘭部岳と横山の急登斜面の疎林も見える






←G展望2:紋内岳、谷間の奥に三角形の突符岳が









→H展望3:砂蘭部岳と横山・桜野牧場や横山への急登斜面(疎林)も指呼の間である






 
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↓黒色は搬出路 赤はツボ足ルート

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