.  とうげしたむめいほう(三角点 下俄郎827.15m) 雪の山と森は私に語った。必要なのは情熱と夢ではなく冷静な目覚めだと、愛することではなく憎悪を超えることだと、多弁な歌やマイクロフォンの声ではなく沈黙だと…。目標を失くし錯雑した感情を病む私の心は、この凍結した白い永遠に救われる。 辻まこと:[山と森は私に語った]
ブナやダケカンバの大樹に出会える緩やかな尾根・山スキービギナーには素敵なルート

三角点: 点名 下俄郎 等級 三等三角点 地形図 函館−館 世界測地系 緯度41°59′13″.7230 経度140°24′47″.4016 標高 827.15m 座標系11(X)-223578.065m(Y)13519.890m所在地 厚沢部町大字鶉村字下ガロー沢 点の記図 なしAY00043S:J1UpXp】

 2007.02.17/umi、ka、haと4名→函館c34m7:00天作沢林道始点車デポc212m8:05-8:13→c300m8:45→c400m9:08→c500m9:36→c600m10:00→c700m10:29→c800m11:00→山頂c827m11:05-11:30c800m11:41→c700m11:56c600m12:08c500m12:22c400m12:40c300m12:54車デポ地着c212m13:07往距4.6km累積+605m累積-0m】

 峠下無名峰827は三角点名「下俄郎」が設置されている山であって人呼んで仮称「峠下無名峰」また仮称「下俄郎」と呼ぶ向きもある。近隣に三等三角点「峠下」613.8m所在地字峠下、四等三角点「天作沢」372.1m所在地字相生461林班へ小班がある。頂上み至る源流は北から鶉川、下ガロウ沢、小鶉川の3河川である。つまり三方へ分水する「峠下無名峰」である。827mを超える山岳は、南に44km七つ岳、東に30km横津岳、北に8km狗神岳、西に13km乙部岳まで離れなければそれはない。山名も無く、広く知られることもない山だから不遇の山と言われてもしかたがない。だが「桧山・上磯丘陵性山地」など亀田半島と松前半島が分岐する周辺の山波を展望できることにおいてはなかなか立派な山と言われてもいい。人々に知られてよい山なのである。】

 コースの地質:中新世後期の館層(黒松内層)相当の丘陵性山地にある天作沢林道分岐に車をデポ。畑作地帯を1000m程歩いてそこをぬけると植林地に入る。標高320mあたりから峠下火山砕屑岩類(黒松内層火山砕屑物、東は二股岳、北は狗神岳、銀婚湯磐石岳の広域を覆う)の南西縁に入る。溶岩が幅広い尾根を形成したのであろうか、無名峰まで至る尾根は幅広く緩やかな傾斜だ。無名峰の東側斜面は、南側の緩やかな地形とうって変わり急崖、岩角地、ヤセ尾根の錯綜した地形だ。ゴヨウマツ林が発達する鶉川源流部右岸域である。】

 温泉名 近隣に見るべき温泉はないが、近年深井戸掘削で当てた鶉温泉はある。また知られる鉱山はない。】



峠下無名峰827には山名はない。三角点名をとって仮称「下俄郎」とも呼ぶ向きもある。山頂から三方に派生する三つの尾根は、その内角を丁度120度ずつ分つように鶉川、ガロウ沢、小鶉川に分水しているが、間違っても東側(鶉川)に入り込まぬようにしなければならない。地形図にもはっきり記されているから分かるが「ゴヨウマツ自生北限地帯」。国有林に配置されている天然記念物の森林なのである。何処でもそうだが、ゴヨウマツは岩角地、断崖絶壁にしがみつくように自生する種である。森林生態学上この例に漏れるゴヨウマツの立地はない。夏にこの森に調査に入ったことがある。やっとの思いで谷から岩尾根に立てたが、ここからも油断がならない。痩せた尾根を慎重に歩くのだが時にはぐらりと動く岩に出くわすことがある。南尾根冬山コースが緩斜面や幅広い尾根と言っても油断がならないのは、一転視界が効かなくなった場合に備えて、通常より地図から目を離さない確かな行動が求められからだ。登山口から山頂まで一本尾根の、ある面ルンルン気分の安全な山スキーコースと言われるが、周囲の地形を頭に叩きこみながら山頂を目指したい山である。振返ると、数年前に峠下の橋のたもとから入り東南尾根から赤旗を立てながら登頂したときは風雪で視界10m、尾根の東側に大きく発達した雪庇の上を避けるルート取りにかなり慎重さを求められた時を思い出す。

登山口は国道227号線の@ガロウ沢川から、A木間内集落から、Bc95mから入る町道がある。○の数値は登山口までの近い順であり、除雪の悪い順位の並びでもあるが、数日降雪があった後だから、案の定@とAは除雪状態が悪く入れない。函館の方向から1番遠い入口の標高点・95mのBから町道へ入った。国道を離れてから相生を経由して天作沢に沿って北上し、共和へ直角に左折する地点(c212m)に車をデポした。天作沢とガロウ沢の間の緩やかな一本の尾根を上り詰めたところが山頂だけれど、天作沢林道入口からは、標高600mから前方はだらだらした登りで山頂はとても見えない。林道始点から入山したが冗長な林道を避けて間もなく右の畑に上がった。造畑時に切り土した崖の西端の沢形地形から進んで四等三角点「天作沢」・372mを経由し、先の天作沢林道が尾根を横断する位置に立った。ここで再度地形図をチェックしたがどこまでもどこまでも緩斜面が続く緩やかな尾根であることを再確認した。

ラッセルは、少雪とはいえ流石にc605に来ると新しい積雪が気温も高いこともあってワカンを装着しても重くヌカル。雪庇も見えてきた。雪堤も適度に発達していてロスを少なく登攀を続けるためにそれぞれコース取りを工夫するようになる。時々現れるブナやミズナラ、ダケカンバの大樹に話題を移しながらのラッセル交替が続く。視界は芳しくないが、雪も時々西から流れてくるが強い風ではない。一心に前進したので早くも頂上か?とチョット拍子抜けだったが、三つの分支尾根が無いのですぐ偽の800mポコと分って、視界があまり良くない中を慎重に地形をチェックしながら頂上に立てた。ダケカンバ・ミヤマハンノキ・チシマザクラ低木林だったが疎立で、全体的には裸地状である。そのとおりの三方の尾根そのとおりの三方の斜面を納得して、本来なら秘峰の名に相応しい狗神岳の展望を期待できるピークであったが、それも叶わないから、風を避けるようにして頂上を早々に撤退した。c800mポコで風を避けながら、期待の秘峰狗神岳の展望捨てがたく、昼食しながら視界の回復を待ったが早急に回復の兆しがない。狗神岳やそれぞれの思いを振り切るように下山することになった。

雪堤に発達が見られるダケカンバ高木林を歩く。帰路は、山スキーで来た場合のコース取りを目で追いながら下るが、雪堤は開放的で何と気分の良いことだろうか。白神山地のブナ原生林が世界自然遺産に登録されてからブナ林が一躍脚光を浴びたけれども、本州日本海側の豪雪地がブナ林の中心なのだが、渡島半島は広大なそれと同質のブナ原生林で覆われている。これは渡島半島の冬山を知る人たちにとって共通の体験だろうと思う。この尾根を下りながらそんなことを思わせるブナ街道も体験できてうれしい山行だった。

森林管理の一つの基本は@高距600mを超す山地、A35度を超す急斜面、B風がとおる尾根は伐採しないことであった。つまり「山境」と呼んだ禁伐林だ。森林管理の先達らの強い意志だった。この尾根は伐採されない禁伐域だったからブナ街道が見れたのだろう。おおむねこの基準に従って管理されている様子がうかがえたが、標高500m台でBの基準に抵触するトドマツ植林地があったが、先年の強風で折れたトドマツの幹が鉛筆のように並んで立ち枯れしていた。林冠に大きなギャップがつくられたが、全体的には良く森林管理の基準に従って管理された標識的な場所だった。原生的ダケカンバ林、原生的なブナ林、生産力の高い植林地・・・多いに将来も満足のできる森林になることであろうと思われた。

私有林ではなかなかこうはいかない。高距と急斜面と風の抜ける尾根と、そこに森林の扱いに差別はないように見受けられる。あるのは、立木の搬出に有価か負価かを秤に伐採されるか否かが決定される。私有林では、領域一帯が地形にかかわらずほとんど二次林になる場合がほとんどなのはこのためだ。国有林の領域は、原生的天然林がメッシュ状に、またパッチ状に又は網の目状に配置されているのあ一般的だ。原生的天然林の配置の様子が国・私有林で大きな違いが認められる。その配置状態から国有林か否かが判別できるのはそこに理由がある。山行の詳細はこちらも→北海道と越後の山へも


↓@登山口からコースの緩やかな尾根を望む(全コースの半分くらいが見渡せる)

↓A四等三角点「天作沢」372mの上部で尾根を横断する林道に出る(8:57、380m)


↓B防風のため天然林の保護樹林帯が森林管理の基準。しかし尾根に植林されたトドマツは、やはり数十年サイクルの強風に遭って風倒木が発生した林冠ギャップ


↓Cブナの大樹。直径100cm独航船、戦前の戦闘機用ベニヤ板材利用前は随所にあったが今は少ない


↓Dブナ林の保護樹帯を行くH、U氏



↓Eダケカンバ高木林を行く(670mでブナ林からダケカンバ林へ)



↓F800m付近になると70cm超す大樹も・・・


↓G山頂にて、ダケカンバ・ミヤマハンノキ・ミネザクラ群落

  
↓Hゴヨウマツ自生北限天然記念物側の雪庇

↓I雪堤が小さくできていた


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↓直径100cm(樹齢がほぼ300年〜500年)

↓ルート図

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