ひぐらしやま303.4m(三角点:小沼山 303.38m) HIGURASIYAMA→世を挙って之を誉むれども、勧むることを加えず。世を挙って之を非れども、沮むことを加えず。→世間中がこぞってって自分をほめたからといって、それで大いにはげみ勇んで仕事をすることもない。反対に、世をあげて自分をけなしても、そのために、意気がくじけるかといえば、そういうこともない。つまり、かれは、世の毀誉褒貶について心を動かさなかった。
雑木林の小さな山を行く

2007.05.09(水)→函館(11:30)→登山口Co160m(12:00)→日暮山(13:00)→登山口(13:30)(kash沿距1.6km+131m-0m 時間0:31)】

三角点:点名 小沼山 等級 三等三角点 地形図 函館−大沼公園 WGS84緯度 41°58′55″.5397経度 140°38′36″.2151標高 303.38m 平面直角座標系(X) -224077.049m(Y) 32598.819m 履歴 [正常 2005/10/12] 所在地 七飯町字西大沼町51番地 点の記図 [選点明治44年4月25日観測明治44年8月5日更新昭和55年5月31日] AY00043S:J1UpXp】

日暮山は、小沼湖と蓴菜沼の中間に位置し、標高303mの美しいお椀形の山である。この山は、昭和初期まで『小沼山』又は持ち主の名をとった『笠原山』と呼ばれていたが、その後この山に登って大沼湖、小沼湖、蓴菜沼間、駒ヶ岳などの眺望を楽しんだ人たちが、その景色の美しさに我を忘れ気が付いてみると日暮れであったということから『日暮山』と呼ばれるようになった。日光を反射して輝く大沼湖、小沼湖、蓴菜沼は、湖畔巡りとはひと味違った眺め。駒ヶ岳の雄姿、裾野が拡がり大沼湖、小沼湖、湖水に浮かぶ大小126の島々。南西下方には手付かずの神秘の湖『蓴菜沼』が樹間に水を湛えている。遠く『函館山』が望まれ、東には横津連山が続き360度の自然のパノラマを堪能することができる。(七飯町設置の案内板より)】 (国定公園第一種特別地域)


コースの地質:日暮山は鮮新世に噴火した火山の岩石(溶岩など)で、更新世以降ニ噴火した駒ヶ岳関連の火山の岩石とは異なる。むしろ、半島の分水嶺から続く二股岳、三九郎岳、木地挽山一帯の山地から、東の方向に尾根状に突き出た(小沼方向に)小さな山である】
 
←@登山口:国道5号線沿いの蓴菜沼を過ぎた信号のある三叉路を右折して、800m走ると右側に日暮山への登山口がある。登山口に駐車して歩きはじめる。しばらく肥沃な林地が続く。樹高20mを超す立派な広葉樹に見とれながら、カツラ、トチノキ、シュリなどの主要なメンバーが勢揃いする道沿いを、これまた野鳥の賑やかな囀りを同定しながらゆったり歩むのも、芽生えの春の森の楽しさだ。林内気候の醸しだす空気もじつに良い。(山頂付近の不利な環境の森林の構成種と、肥沃地の構成種とを比較するのも面白い。)
←A車道を利用した登山路を歩く。車道建設のために切り土された山側の斜面は、表土が静かに侵食され続ける運命にある。そのために切り土の法面側の斜面は、クマイザサの密度も薄く、かつ鉱物質(表層)が露出されやすくなる。そこには春の花の生育が多く見られる。左のAの写真はタチツボスミレだろうが、左下に見える白い花色のスミレは?別株であった。「茎葉に白毛が多く花の色は白い」、一見あきらかに別種のように見えたが…はたして同種?暫し見とれていたが紛れもなく同種だった。
←B頂上の100m手前に展望台を兼ねた駐車場がある。駐車場からは、開葉したブナ林の場所を確認することができた。湖畔の周囲の雑木林は、まだ開葉前の褐色だったが、しかし、遊覧船乗り場のいくつかの島々の森林だけが新緑の色に染まっていた。ここの新緑はブナ林である。何処でもそうだが、この時期は、ブナが生育している場所を一目瞭然で判定できる。「優占度類型による森林植生図」を作成する時、「ブナ林の分布」現地確認にとても有効な時期でもある。
←C日暮山から駒ヶ岳とゴルフ場を遠望した。駒ヶ岳をぐるっと一周した森林は、まだ新緑の色にはなっていない。しかし、ゴルフ場のシバと開葉の早いカラマツだけは、新緑に輝いていた。周りに見える褐色の森林は、イタヤカエデ、シナノキ、ミズナラを主とする広葉樹で、開葉はちょっと遅れてくる。(チロチロと赤みを帯びたりして芽を開く種は、小枝の色に沈んで遠目には緑色ほど目立たないこともあるが…。)
←Dミズキの開葉を手に取ってみた。林道沿いの樹木は、手元に小枝を引き寄せれるからうれしい。この時期は芽鱗の起源が分かって、それもまた楽しみの一つである。葉柄起源の赤色の数枚の芽鱗が開いて、開葉を始めたミズキのようす。
→E日暮山にブナは生えていない。駒ヶ岳をぐるっと一周してもブナの生育はないと言って良い。噴火の繰り返しがそうさせたのであろう。さらに薪炭林としての繰り返し伐採も一役をかっている。しかし、森を丁寧に歩いてみると、ブナに出合う場合がある。どうしてブナがここに生えているか、興味深い事柄である。日暮山の登山路に、ブナを2本確認できた。ここの雑木林の来歴を知る縁となるブナだ。ブナの木は開葉が早いから、これまた見つけやすい。
←F通直な整斉とした幹のカツラがあった。樹高は25mもあろうか。カツラは、日暮山の土地条件の良い凹形の緩斜面にじつに多い。上方に、伸びた小枝に新緑の葉っぱが見える。トチノキの開葉だが「カツラ・トチノキ林」と言って良いほどここには同所的に生育していた。ちなみにトチノキの北限は銭函のようだ。太平洋側の北限は登別を越えて何処まで到達しているのだろうか。
→Gトチノキの開葉は、雨傘のような掌状に分裂した葉っぱを出す。新条が伸長しているようす、そして葉の出方が対生であることも、葉っぱの間から見てとれる。ネバネバした葉柄起源の芽鱗は既に落として、大きな白っぽい托葉も見てとれる。
←Hシナノキの開葉は赤みの芽鱗が目立つ。小さな革質に見えるのが托葉起源の2枚の芽鱗だ。淡い赤色は托葉で、緑色は新葉ということになる。まもなく淡い赤の托葉は散り落ち、それがばらまかれた林床が美しい季節が来る。
←Iハルニレの開葉と結実のようすが分かる。ハルニレの開花は早い。ミズバショウの花咲く時期はハルニレの開花は済んでいる。開葉前に開花した雌花は、もう果実が進んでいる。果実の翼の真ん中に、種子の形が丸くふくらんでいるのが認められた。5月下旬には果実を落果させる季節だ。ハルニレは何故、結実・落果をそう急ぐのか。
←Jシュリの赤い開葉も林内に目立つ。林内で早い時期に開葉が見られるのは赤っぽいものが多い。例えばシュリ、ウワミズザクラ、ベニイタヤ・・・。托葉起源の芽鱗はもう落下させていたが、森の中で、写真のようにほんとうに美しいピンクに見えるのが早落性の托葉だ。

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