松倉川   まつくらがわ

 

渓相の美しさは多くの人に驚きをもって知られ、市民を魅了する

日程】:【2007年10月28日(日)

ルート】:【ミズノ沢出合入渓〜C455二股〜羽衣の滝(天女の滝)直下(右岸小沢を登り作業路に出る)〜アヤメ谷地〜ミズノ沢左岸作業路〜ミズノ沢出合】

メンバ】:L:Hozu SL:Matu ME:Taka,Haya,Huku,Honm

行程】:【10月28日(快晴):東山(6:00)→ミズノ沢出合P(7:00)→ご神木(9:30)→二股c465m(9:55-10:15)→羽衣の滝・天女の滝c565m(11:09-35)→アヤメ谷地c750m(12:15-12:30)→ミズノ沢林道と作業路分岐(13:20)→ミズノ沢出合P(13:57)→湯遊の湯】

時刻&標高】:(0700-315m),(0730-340),(0745-340m),(0800-360m),(0815-365m),(0815-365m),(0830-375m),(0845-400m),(0900-420m),(0915-430m),(0930-440m),(0945-450m),(1000-465m),(1015-460m),(1030-495m),(1045-520m),(1100-560m),(1115-565m),(1130-565m),(1145-610m),(1200-660m),(1215-745m),1230-750m),(1245-700m),(1300-580m),(1315-490m),(1330-485m),(1345-370m),(1358-312m)


コースの地質】:松倉川の支流天狗沢出合あたりの河床に、古生代の美しい粘板岩が露出している。地質構造は、その上を時代を画して新世代中新世〜鮮新世の火山岩類や凝灰岩類が覆い、袴腰岳や横津岳の更新世前期の溶岩地帯に至る。入渓地点のミズノ沢出合からc465mの二股から左股をたどり〜黒滝へ至るコースは暗色の安山岩質の河床が続く。一方、二股から沢を右に入るコースは、かなり明るい谷になる。表層剥離した明るい急傾斜の崖が右岸に目立ってくる。さらに沢を進むと、左岸から羽衣の滝が掛っている。まさに、明褐色の岩棚状の滝を羽衣がかかったように水が流れ落ちている。正面には天女の滝がある。両滝とも凝灰岩のためにハーケンなどは効かないであろう。天女の滝は、凝灰岩・大角礫岩・泥岩がほぼ水平に互層をなしていた。滝の手前を右岸に登り切ると、アヤメ谷地一帯の平原状の台地に出る。ここが広大な万畳敷へ続く安山岩質溶岩地帯であろう。

........@横津岳の溶岩台地 A平原状のアヤメ谷地〜万畳敷〜分水嶺のまでが安山岩質溶岩 Bc465m二股から右股の天女の滝までが、明るい色の水生堆積物の凝灰岩類 C入渓地点から小滝〜左股の黒滝までが暗い色の安山岩質集塊岩類 Cから@に向って、重なりあっっている。........@がおよそ 20万年前の火山岩 Aがおよそ 80万年前の 暗色の火山堆積物 Bがおよそ 100万年前の 明るい凝灰岩 Cがおよそ 180万年前の 暗い集塊岩 と言ったところでしょうか。 天女の滝も羽衣の滝も 岩が脆いから クライミングの対象とならないと考えて良いでしょう。

 


 松倉川を遡行するのは、黒滝コース2回、天女の滝コース2回、他の支流6回。合わせてかれこれ9回目になる。
 函館近郊にこんなに美しい沢があることが、近年多くの人に、驚きをもって知られるようになってきた。苔生している小滝群が次々と続き、釜毎に魚影を楽しめる。洪涵地が発達しないため渓畔林に伴う薮をほとんど通過することはない。岩をはむ美しい水流を堪能しながら遡行を楽しめるからであろう。なによりの市街地からすぐの位置にある。ブナ林が渓流を覆っているからブナ林ファンにはまたたまらない谷間だ。
 この知名度のためか、今年の”沢納め”と称して、同人ラリーグラスのメンバーや知人等が札幌から6名来函した。彼らのもうひとつの希望は、”日本の岩場100”に紹介されて最近知名度がさらに高まった”函館山南壁”であった。 彼らの魂胆は、この際函館知名度満腹ツアーと言うことであるらしい。しかし、ここ数年ほとんど利用されていない岩場のために、南壁へのアプローチはブッシュ状態であった。しかたなく、27日は南壁をあきらめ場所を変えて立待岬の岩場でクライミングを遊ぶことになった。
 【→右上】上右:立待岬岩場のクライミングルート(白い斑点が既存ハーケン)...ち密で堅硬な岩とされる石英安山岩質の立待岬溶岩だが、強い潮風によって、細かな造岩鉱物たちの風化の違いが、ルートの岩場をザラザラ感(粒径の荒い凝灰岩風)のある岩肌にしたのでしょうか

→右下】:岩場の割れ目に生育するオニヤブソテツ。
オニヤブヤブソテツJapanese holly ferm
オシダ科ヤブソテツ属
Cyrtomium falcatum (L.fil.)Pres
常緑性で革質葉。
葉身は頂葉片のはっきりした単羽状複生。
側羽片は鎌状で先端は鋭頭。
日高、胆振、後志以南に分布。
北海道では海岸の岩場の割れ目に生える。

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←左上:入渓地点・ミズノ沢林道の壊れた木橋

寒さも気になる時節だが、入渓日の28日の平年値を拾うと、気温は最高14.1平均9.4 最低4.5、初霜10月17日、初氷10月22日、横津岳初冠雪10月24日、初雪11月2日となる函館だ。さらに日の出6時02分、日没16時39分では、既存コース以外は困難だ。新コースを開拓する遡行はできない。


ミズノ沢林道に敷設された壊れた木橋から入渓した。流石に沢水は冷たい。季節は晩秋から初冬だ。小滝群の続く渓畔は、洪函地はほとんど発達していない。岩をはむ流だからいわゆる渓畔林はない。

斜面のブナ林が小滝群まで迫って下りている。小滝群の岩場はどれも苔生して、苔庭とでも呼んでみたくなるきれいで趣きがある。


←左下:赤銅色の樹冠のブナ林ブナ林の黄葉は、緑色〜黄金色〜赤銅色〜褐色〜落葉と、その色の時代を時と共に変えていく。渡島半島のブナ林は、例年20日を過ぎてから、このステージをほぼ1週間で目まぐるしく駈けていく。黄葉が遅れていると言われる今年でも、流石に今日は赤銅色のステージだった。黄金色のステージであれば遡行する面々の顔をパッと明るくしたであろうが、赤銅色の樹冠は、太陽光を十分透過させてくれない。黄葉の谷への期待は、明るさに置いて期待はずれであった。


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→羽衣の滝】 c465m二股から右の沢入る(左を進めば黒滝〜アヤメ谷地に至る)。沢の雰囲気はここまでと一転変って明るい色の崖が目立ってくる。明褐色の崩壊地が左岸に連続して現れてくるのだ。崖の成因は表層剥離によるもので、土壌化の進んだ層(A/B/C層)が樹木共々一気に崩壊する現象だ。崩壊地の滑り面は凝灰岩の基岩になっていた。
 崖を注意してしばらく進むと、同色の滝が左岸から流れ落ちていた。羽衣の滝だ。3〜4m毎にくつかの水平のテラスが形成されている。この滝を高巻きするとすれば右も左もしっかりしたブナ林だから、美しい滝を眺めながら容易な高巻きを楽しめるであろう。


 →天女の滝】 羽衣の滝の左に目を転ずると、本流にかかっている天女の滝はすぐそこだった。羽衣の滝と同色の凝灰岩、そして大角礫岩とが互層を成していた(写真のベルト状の狭い方が大角礫岩、幅の広い方が明色の凝灰岩)。最上層は泥岩であった。
 ルートは左岸を高巻きして滝上に出るのだが、この度は右岸を登り平坦な台地状の尾根に出るルートを選んだ。岩礫斜面のような苔に覆われた大角礫の小沢上るとアカエゾマツの植林地に出た。植え列に沿って、ブナ林と植林地の間を上流に進むとほどなく、地形図上にも掲載されている作業道に出た。
 右に進むと本流に下る作業路で、左に進むと目指すアヤメ谷地へ抜ける作業路だった。いずれもオフロード車なら十分走行可能な道路だ。

 →アヤメ谷地】 
 天女の滝下から右岸の小沢〜作業路〜アヤメ谷地へとエスケープルートを選んだ。アヤメ谷地への近道だ。
 地形図上の細い実践だから、伐採後放置された搬出路だとすると・・・やや不安はあったが、植林地管理のために砂利まで敷かれた立派な道路だった。アヤメ谷地には、今春から道立公園に編入された新設の立派な看板が設置されていた。
 帰路は、ミズノ沢林道へ下りる地形図上の細い実践を頼りにした。こっちの道は、伐採後放置された搬出路だった。放置され荒れ放題の道だったが、笹に覆われていながらも道形をしっかり辿ってミズノ沢林道に合流できた。このルートは多いに利用されていい。通常アヤメ谷地まで車を回してから入渓するが、1時間の車回しを考えると、1時間30分で降りられるミズノ沢左岸の道を下るのがいい。

.←ブナの二次林】 
優占木の平均直径が18cm前後であるから18*3で林齢54年前後と思われる。昭和25年前後の炭焼き跡であろうか・・・?だとすれば周辺に炭焼釜の跡が探し出せるであろう。
 ”ブナの黄葉は、函館周辺で10月20日を過ぎた日曜日に黄金色に輝く”とよく言う。「断定して良いのか」と眉唾物とされるが、だいだいそうなあのだから言い続けている。今日は第2日曜日。今年は黄葉が遅れていると言われても、写真のようにもう赤銅色に変化している。2日後には色あせた褐色の時代に入るであろう。
←ヒグマの足痕】クマイザサをかき分けて薮を出るとそこはミズノ沢林道だ。真新しい足痕は少年〜青年のヒグマに足跡があった。


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↓エスケープルート アヤメ谷地からミズノ沢へのルートを示す。・608mの尾根にある作業路は採石が敷かれており立派な林道だった。・756mの尾根を下る作業路は浸食が激しくさらにco660mからクマイザサに覆われた薮である。しかし、薮に潜りながらも道跡を見失うことはない。


松倉川層→ いわゆる右股のみ分布して、黄色味を帯びた凝灰質砂岩および泥岩から成り立っている明るい谷だ。きわめてもろい層であることは表層剥離の崖から類推できた。水平に近い層理を持っていることは天女や羽衣の滝から見て取れる。角礫岩は天女の滝正面ベルトに1mほどの厚さで発見できる。

以下 函館市史P54< 函館付近の鮮新世の地層には松倉川層があり、寒川火山噴出物層、松倉集塊岩層の上に不整合を成して乗っている。松倉川層は鈴木 長谷川(1963)によると、松倉川の最上流部にのみ分布している。黄色味を帯びた凝灰質砂岩および泥岩から成り立っており、非常に軟質である。南東側に5度ほどの傾斜を示す程度で、ほとんど水平に近い層理を持っている。鈴木ら(1969)によると、松倉川層最下部には下位の安山岩質プロピライトTに由来する砕屑岩が発達し、両者の接触面には褐鉄鉱が沈殿しており、この上には、やや炭化した木片をはさみ、多量の浮石を包含する泥岩が発達している。更にこの上部には薄い凝灰岩や砂岩と泥岩との細かな縞(しま)状の互層がやや厚く発達し、最上部では泥岩中に多量の火山角礫を含む集塊岩様の岩相に移化し、特に細互層部には著しい層間褶(しゅう)曲構造が認められるとされており、湖成堆積物と考えられていることは両報告とも同一である。 鈴木 長谷川(1963)により鮮新世地層と同時期と考えられる火成岩類には、雁皮山溶岩、三森山溶岩、石英粗面岩溶岩がある。>


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