なべだけ 〈三角点名「鍋岳」927.86m〉 .

 

峨々たる乙部岳の隣にひかえて,お椀を伏せたような穏やかな山。何故か叶わぬとおい山

日程】:【2008年03月01日(土)】【(曇天暖気):函館(4:35)→清水林道入口Co112m車デポ(5:45-6:15)→国有林入口Co161m(7:20)→岳沢分岐Co250m(8:05)→林道終点で渡渉Co265m→ヤセ尾根取付きCo270m9:15)→植林地西端のヤセ尾根上る→植林地を抜けて天然林へ出るCo350m(9:35)→標高点・421m通過→Co750m行動中止(11:05-11:20)→林道終点着12:00)→林道入口車デポ地着(14:10

メンバ】:L:Ko玉 Me:Tak,Sak,Ham

三角点】:点名 鍋岳 種別等級 三等三角点 地形図 室蘭−濁川 緯度 42°03′17.2673 経度 140°17′22.7962 標高 927.86 m(X)-216076.666 m(Y)3283.177 m 現況報告無し 所在地 北海道二海郡八雲町字野田追

コースの地質】:峨々たる乙部岳は、大千軒岳・遊楽部岳・大平山と並ぶ渡島半島の高峰ですが、これらの高峰は同類の隆起地塊からなり、従来古生代日高系古生層(現呼称は松前層群や上磯層群)と呼ばれていました。峨々たる乙部岳に隣接して鍋を伏せたような穏やかな山容の鍋岳は、乙部岳とチョット様子が違っています。山の成り立ちや成因において古生層の乙部岳とは異なることを、地形図からも容易に想像させてくれます。

森林】:清水林道入口から「私有林」があって、森林の手入れのための、小屋が雑木林の中に見えてきます。実直な管理人を偲ばせる、滞在したくなるような山小屋です。小屋を過ぎて間もなく、よく手入れの行き届いたトドマツ林やスギ林の「町有林」が林道に沿って続いていました。手入れは「保育」の最終段階の枝打ちが2〜4mの高さまで丁寧に実施されていました。これほど手をかけられた植林地は、林業不振の今どき、希少価値といって良いでしょう。厚沢部町の心意気を感じられました。間もなく「国有林」入口の立て看板が見えてきます。国有林の領域ですが、清水川の最奥まで、土地生産力の高い土地の天然林はほとんどがトドマツ植林地に転換されました。清水川に沿ったCo140m地点から三角点416.2mに至る尾根に歩道がついています。古来、ここからが乙部岳登山路でした。ヒメコマツの林の尾根上の道で、林床に苔が生えていたり心地よい登山路でした。1960年代までの高校山岳部が通ったであろう登山路は、今では知る人もまれでしょう。清水川の右岸側は、乙部岳や黒岳から降りてくる長大な急斜面が発達しています。さらに尾根も谷も急峻です。いわゆるヤセ尾根が発達する粘板岩を主とした古生層域です。スキーを滑らせながら眺める乙部岳の方向は、ヤセ尾根にはヒメコマツが目立って多く、時にはヒノキアスナロも自生しています。夏場であれば林道沿いの岩場植生も楽しめる林道ルートです。Co230mの岳沢分岐に至ると乙部岳からの南東稜が圧倒的に見えてきます。今シーズン2月にこのルートをスノーシューで開拓した尖鋭のニュースがありました。同所に大きな看板がありました。ブナ林の若返り法の林業技術を展開した場所の説明板でした。Co270mを渡渉してトドマツ植林の斜面に入ると、あまりにも急であり30°以上はあるでしょう。生産力の低い斜面だから下枝や広葉樹お幼樹が邪魔でスキー板の処理に難儀しました。ツボ足では上半身が雪に埋没しそうでそれも叶わず。こんな場所は経済的にもトドマツを植えてはいけない・・・ブツブツ・・・格闘しながらなんとか登りきって、ブナ林にでてほっとしました。 縦横にめぐらされたブルドーザーの走路のある、最近のブナ抜き伐り跡地を過ぎて間もなくCo600mの尾根に転進しました。いよいよブナ帯上部です。伐採はここまで達していない。パステルカラーが様々な地衣類の樹幹がみずみずしくもあり、生気に満ちたブナの原生林域でした。深雪を踏んで懸命に標高を上げてブナ林にダケカンバが混じってくる頃には、風雪と山鳴りが激しくなりました。                

 

↓尾根取付きから行動中止までのルート図ヤセ尾根への取付きがトドマツ植林地でした。トドマツの下枝や下生えのブッシュが煩わしかった。Co350mに出ると安定したブナ林の尾根と緩斜面が繰り返すようになった。標高点・451mを過ぎてCo550mあたりから一本右の尾根をねらって移った。Co730m付近で風雪激しく、行動中止した。

350m〜600m台のブナ択伐跡地(ブルドーザーによる縦横に開設された搬出道)を過ぎると、ブナの大木が林立する美林に遭遇した。ブナの原生林の中で疲れをいやすKo玉氏、SAK氏、HAM氏ら。
さて頂まで1時間余りです。樹幹の地衣類の斑紋模様はパステルカラーのようにとても美しい。風雪の中の奥山で生きる巨木がいとおしくもなった。我々も負けずにさらに奮闘を期した。
風、雪が強まってきた。ブナの樹冠を揺るがす山鳴りが激しくなってきた。シュプールも今にも消えそうだった・・・。乙部岳を指呼とする尾根に出れば、風はさらに強まることであろう。ここいらが無理せずに「行動中止」どころでした。帰路は赤テープを頼りに、深雪をラッセル車のように新雪を下に流しながら滑り下りた。←左の写真は濡れ雪、アラレ、乾き雪・・・目まぐるしく変る降る雪の変化があった。スキー板が雪の団子になってしまって、その付着した雪を始末する様子です。
雪は深かった。ストックは50cm程度刺さった。風がゴーゴーと山鳴りしていた。雪面を吹きすさぶ雪がブナの根元を激しく流れていった。午後から来るであろう寒い空気団はまだまだだが、乙部岳と対峙するここからすぐ上の尾根に出れば、確かにブリザードか?「行動中止」の声がかかった。一気に今後の不安を解消させてくれたが、ここまで来て登頂を断念するのはやはり無念・・・。しかし、ブナ帯上部の森の健在だったことも見えたし、深雪の世界も楽しめたし・・帰路の森の風景も楽しみなことであって、何故か身も心も軽くなっていった。
ヤセ尾根のハクサンシャクナゲ(トドマツ植林の上縁):標高点・421mに至る尾根はブッシュが煩かった。ツツジの類が密生するヤセ尾根は、植林地側はまだ若い細い直径のトドマツ林のこともあって枝が煩くてスキー板を履くのはあきらめた。右は崖状の急斜面で雪崩落ちてしまいそうです。左右とも逃げ場はなので、しかたがないから、皆ツボ足を強いられて、臍まで雪がヌカって難儀したヤセ尾根の下りでした。
乙部岳から流れ落ちる尾根に、ヒノキアスナロやヒメコマツの林が、行く林道から絶えず見とおせた。古生層の大斜面で、ヤセ尾根のそれらの林の下にはツツジの仲間といっしょにハクサンシャクナゲがたくさん自生している清水川流域です。(厳冬のハクサンシャクナゲの葉っぱがまるまった形状→)
 



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