. おこつないだけ 〈点名 乙内岳 1170.38m〉 OOTENGUYAMA→世を挙って之を誉むれども、勧むることを加えず。世を挙って之を非れども、沮むことを加えず。→世間中がこぞってって自分をほめたからといって、それで大いにはげみ勇んで仕事をすることもない。反対に、世をあげて自分をけなしても、そのために、意気がくじけるかといえば、そういうこともない。つまり、かれは、世の毀誉褒貶について心を動かさなかった。
狩場山の馬蹄形噴火口をなす外輪の端っこの山:地すべり崖が両側に落ちてヤセ尾根が美しくもあり・・・

行程】2008.04.26(土)→茂津多岬の狩場山登山口Co240m発(6:00)→森林生態系保護地域看板Co460m(6:30)→Co615m(7:00-15)→夏靴からプラブーツへ履き替えCo805m(7::41-50)→ハイマツ初見Co825m→前山手前の夏道Co1195m(908-15→オコツナイ岳への尾根取付き1096m(940→頂▲1170.4m(1050-1115)→尾根取付き1096m(11:45→Co1030m(13:00-10)→525m(14:47-57)登山口240m着(15:30)

三角点】点名 「乙内岳」  種別等級 三等三角点 地形図 久遠−狩場山  緯度 42°37′48.4551  経度 139°54′13.1014  標高 1170.38 m (X) -152118.048 m (Y) -28408.575 m 現況状態 報告なし 所在地 北海道島牧郡島牧村大字原歌村字オコツナイ 点の記図 × △参考 山の名前「前山」の三角点名は「乙骨内」

オコツナイ岳】 狩場山火山(?)の外輪は、馬蹄形の爆裂噴火口(?)を北に開いて、北側から右回りに・1249、・1243、フモンナイ岳1337、・1311、東狩場山1319、・1354、狩場山1520、前山1260、オコツナイ岳1170とほぼ定高の尾根になって続いて並んでいる。オコツナイ岳とフモンナイ岳との間を小田西川が深く浸蝕して北西へ流れている。

コースの地形】 須築川の橋を渡って茂津多トンネル手前の林道(標高差180mの急崖に開設された林道)を駆け上がると、一気に狩場山溶岩で形成された茂津多岬の台地の上だ。登山口はこの台地にあって、登山口から前山まで沿面距離7,500m、標高差1000mの登山路がある(狩場山登山の茂津多コース)。そのコースの内、傾斜が10度未満の緩やかな山路は実に5900mにおよび、全体の78%の距離を占めていた。狩場山溶岩の先端が茂津他岬の海にまで落ちていたのであった。900m台以高では、そのルートの台地状尾根の幅は500m〜700m、長さ2500mもあって、目を見張るほどの広大な溶岩台地であった。前山北方にあって、溶岩台地の向こうに忽然と現れるオコツナイ岳は、切り立った尾根がせり上がって頂きに至る。なかなかカッコウが良くて見た者をすっかり魅了させる山容であった。ヤセ尾根は、地すべり頭の岩壁になっていて、左右がすっぽりと落ちていた。広大な台地との間の眼下に、火口湖であろうか、地すべり成因の沼であろうか、オコツナイ沼が想像以上に大きくて、岩塊に囲まれて美しい沼になっていた。頂きに立って大満足してしまい、北の方向の眼下にはオコツナイ小沼が見えたはずだが、その小沼を確かめる作業を失念してしまった。頂と定高の尾根を50mばかり北に歩めばそれは見えたはずだったから、残念な忘れ物をしたものだ。フモンナイ岳とオコツナイ岳を分かつ小田西川の底は見た。幅が600mで川に沿う2000mほどの緩やかな地形が続いていた。地すべり地形とも、押し出し地形とも言えるが、標高500m程度であるから土地の生産力は高いとふんだ。地質図を見ると小田西川の底は、更新世後期の狩場山溶岩を載せる基盤岩になっている中新世のオコツナイ層が占めていた。小田西川の右岸・左岸とも地すべり地形を呈していた。このような河川の遡行は、はたしてどのようなものであろうか。

森林】 茂津多トンネル入口の斜面にはスギ植林地が見えた。登山口周辺の台地の森林は繰り返し伐採された二次林が主体でその中に植林地が配置されていた。トンネル入口周辺は麓に土屑が積もった面であって土壌は肥沃であろう。スギ植林の経済的北限域を越えている地域であるが、山に囲まれて穏やかな気象も加わって植林者はスギを選んだのであろうか。台地上は風の強さなど厳しい気象条件にある。土壌も詰まり型になりがちだから、地形の小さな違いで木の高さがおおいに異なっていた。樹冠は風に撫でられている姿にもうかがえた。繰り返し伐採されたところだからあたりまえだがブナは全く見られなかった。登山口からルート上のCo460m付近までの尾根はほとんど平坦だから、地形学的には尾根であるけれど、湿りの土壌が醸成されて、一般に谷間にあるオヒョウやヤチダモも見られた。さらに林床にはクサソテツ、オオウバユリ等の湿性土壌を指標する種が登山路に続いていた。腐植層も発達しているから脚にはやさしい柔らかさがある山路だった。Co460mあたりで松前半島に密度が高く自生すると言われるナガハシスミレの群落があった。ナガハシスミレの北上は何処まで?。スミレサイシンの密度も高い。ブナの開葉も始まりムシカリの開花も見た。例年になくかなり早い植物季節の移ろいだった。Co500mを越えるといよいよ原生的ブナ林に入る。支庁界の尾根路ではあるが、溶岩台地上のブナ林はまるで山麓の手付かずの豊かなブナ林を歩いているようであった。Co800mを越えてハイマツがチラホラ見えてきたが間もなく背の高いハイマツの海に入った。1000m以高になると残雪が幸いして、ハイマツ林とダケカンバ低木林が溶岩台地にモザイク状に配置されているのがよく見えた。岩石が露出したり地表近くに岩礫があるとハイマツ林になり、岩礫の露出がないとダケカンバ低木林になっていることも見えた。オコツナイ岳へのヤセ尾根はハイマツ、キバナシャクナゲ、ツツジ類が覆って、山頂にはチシマザクラの群落があった。頂きに櫻の咲く頃は、人知れず、華やかなひと時を過ごすのであろうか。山頂から眼下に見下ろす小田西川は圧巻だった。地すべりの土石が谷を埋めているのか、押し出し地形なのか、幅が600mほどの広い”谷底緩斜面”が開けていた。地すべりや押し出しによる成因の谷底緩斜面は、一般的に生産力が高い。緩斜面のひろがる谷底の森林はどんなであろうか・・・。困難な小田西川の遡行を果たした同行のNU氏の語りへの期待は、ますます興味深く大きくなった。なお、床前川右岸の斜面に、トドマツがブナにかなりの密度で混交していた。これほど密度の高い、かつ広がりのある例は他に見ない。フモンナイ岳へのアプローチに見たトドマツ・ダケカンバ林といい、狩場山塊の海側の森林はますます興味深い。同行者NU氏。


茂津多トンネルの須築側入口:斜面の新緑はブナ・黒緑はスギ植林。伐採が繰り返されてブナの密度がかなり低いことが分かる。ことのほか今年の植物季節の進みぐあいは早かった。例年なら5月に入ってからブナの新緑がある。行く先の亜高山帯の残雪が気に掛る
茂津多コース登山口:繰り返し伐採された、シナノキ、エゾイタヤ、ミズナラの二次林となった風景:風の影響で樹高は低い。右の看板は「森林生態系保護地域」
床前川右岸・標高600m付近のトドマツ:ブナ林へトドマツの混交(トドマツの混交密度は他に例が見られないほど高い)。標高300m付近から床前川を挟んで登山路の対岸に認められた。フモンナイ岳へのアプローチ上のトドマツといい、狩場山塊の海側の森林がその特異さで・・・面白い
標高800m付近:夏靴からプラブーツに履き替えた(間もなくダケカンンバ低木林へ突入する)
標高1000m台のハイマツ林とダケカンバ低木林がモザイク状に配置されていた:帰路、背の高いハイマツに囲まれて一時出口を失う
溶岩台地上のハイマツ低木林:ハイマツ群落下はこのように”岩礫”の場合が多かった
前山手前の夏道1200m付近(須築川に面する南側斜面):例年になく早い雪解けの様子:雪の少なさにこれからの前進がはたして順調に叶うか・・・心許なかった
900m台以高の溶岩台地:向こうに前山が見えた。台地状尾根の幅は500m〜700m、長さ2500mもあって、目を見張るほどの広大な溶岩台地であった
オコツナイ岳:低木林に阻まれて前進は無理かと思われたが、台地の残雪をつないで北に進むと目的の頂が顔をのぞかせた。息をのむ美しさで迎えてくれた
オコツナイ岳:尾根の下方の右に見える岩壁は、左右にキレ落ちている地すべり頭の崖だ。ヤセ尾根にはほとんど雪がない。藪こぎを覚悟する
オコツナイ沼:オコツナイ川の源頭にあり、台地崖の岩壁に囲まれて火口に見紛うオコツナイ沼。水辺に大岩が配置されていてとても神秘的な美しい沼だった
オコツナイ岳へのヤセ尾根を振返る:尾根歩きは雪の上をビビリながらの歩きもあったが、ほとんど藪こぎで登った。尾根に見える雪は、落ちる心配があってほとんど歩かなかった。ツツジ類、キバナシャクナゲ、ミヤマハンノキ、ナナカマド、ダケカンバ・・・の薮
頂上肩のチシマザクラ群落:満開に花咲く時は、華やかに着飾る一瞬が人知れずこの頂に・・・
小田西川の谷底:地すべりの土石が谷を埋めているのか、押し出し地形なのか、幅が600mほど長さ2000mほどの広い谷底緩斜面が発達していた。生産力の高い土壌であろうと思われた。どんな森林で構成されているのであろうか?
小田西川の谷底:向かいの壁は外輪の端っこの山フモンナイ岳。広大な谷底緩斜面も見える
フモンナイ岳と東狩場山、最右側は狩場山へ:黒い帯となって溶岩が露出していた(オコツナイ岳から)
主峰の狩場山、左端がフモンナイ岳、奥に東狩場山が見えた:小田西川源頭部
満足のオコツナイ岳の頂で:背景は狩場山
inserted by FC2 system