.    814.9m(小鴨津川源流)    三角点名 袴腰 814.85m OOTENGUYAMA→世を挙って之を誉むれども、勧むることを加えず。世を挙って之を非れども、沮むことを加えず。→世間中がこぞってって自分をほめたからといって、それで大いにはげみ勇んで仕事をすることもない。反対に、世をあげて自分をけなしても、そのために、意気がくじけるかといえば、そういうこともない。つまり、かれは、世の毀誉褒貶について心を動かさなかった。
袴腰岳は盟主”大千軒岳”の南4km、松前半島の主崚にある。知内平野〜函館平野の展望に恵まれ、牛岳、桂岳、毛無山越しに駒ヶ岳〜横津岳も見とおせる。稜線上にササ原が広がる。

行程】 2008.06.15(日)→函館発(4:45)→福島町朝日→及部川左岸の道路に入る→道々石崎松前線Co400m着(7:10)→右折して林道へ→小鴨津川右岸沿い大森沢林道Co450mに車デポ(7:40)→小鴨津川Co430m入渓(7:55)→二股は右へ東進→Co630m(二股)(8::45)→右沢へ→Co670m(二股)(9:00→左沢へ→袴腰岳△814.9m(9:45→往路を下る。

三角点】 点名 袴腰  種別等級 三等三角点 地形図 函館−大千軒岳  緯度 41°32′49.6148 経度 140°10′21.7912 標高814.85 m (X) -272456.767 m (Y) -6447.279 m 所在地 松前町字清部

コースの地形】 伝説の黄金の滝から白神岬まで南北30km、3km幅で古生代(二畳紀-三畳紀)とされる松前層群が、隆起して分水嶺をつくっている。入渓地点からその領域の中にあって、極めて硬いチャートなどの硅質岩が沢身を占めていた。この種の岩は、本来スパイク底に引っかかりがなくて、滑りやすくとても難儀するはずだ。しかし、よく苔生した美渓、さらにヒラギシスゲが渓流の岩によく着生していたから、それらを使ってスパイク長靴もスパイク地下足袋も、沢身は思いのほか安定して歩けた。源流を進んで、5m超の滝が二箇所現れた。緑黒っぽい玄武岩質の岩石だったが、谷壁にはしっかり植生がねっぱっていたので両滝も右岸を難なく巻くことができた。ほどなく、比較的丸みを帯びた三角点のある稜線に出た。

 北に前千軒、南に檜倉山、百軒岳、周防堂山、松倉山、白神岳までの稜線が見とおせた。駒ヶ岳〜横津岳〜函館平野も見とおせる展望のいい山であった。岩部岳山塊も池ノ岱山も近くに見えた。

 分水嶺にある古生代の松前層群の周りは、新第三紀中新世前期の福山層に覆われている。入渓地点の西側、道々石崎松前線が通る緩斜面が発達するあたりが、その福山層にあたる。さらに西に進むと、八兵衛岳から海岸までの急峻な地形の松前層群が、また現れてくるのである。この様子を下図の断面図でみてみた。

森林】 遡行途中の左右の谷斜面には、時に雪崩荒地植生のヒメヤシャブシ・タニウツギ群落が現れ、豪雪地帯を物語っていた。分水嶺のササ原、前千軒岳から袴腰岳にかけて特に顕著だった。その成因は何であろうか? 渡島半島の一般山地では、標高800m前後の山稜はブナかダケカンバに覆われているのが一般的だ。拾ってみると大平山の西稜、長万部岳の北稜、カニカン岳付近にもササ草原が見られる。いずれも古い鉱山が近くにあった山域だが・・・関連は分からない。松前半島の分水嶺は、豪雪と冬期の海からの強風にさらされてはいる。 

↑袴腰岳から江良まで、東西の横断面図
 小鴨津川は、袴腰岳を源に江良に西流している。
 中二股沢は、知内川となって千軒集落を東流している。
 松前半島の分水嶺は、袴腰岳をとおって南北方向に走る。
 石崎松前線は、小鴨津川を横断し、分水嶺に平行に開かれた。
 袴腰岳をとおる南北方向の半島分水嶺は、松前層群が占めている。
 八兵衛岳から江良まで、古生層松前層群の急峻な山地が広がっている。
 袴腰岳と八兵衛岳の底部を埋めるように、福山層が古生層に乗っかっている。
 道々石崎松前線は、緩斜面が発達する福山層を縫うように南北方向に走っている。
沢身の硅質岩の岩に生育するヒラギシスゲ
渓流沿いの岩上ヒメノガリヤスが涼を呼ぶ
袴腰岳から前千軒岳1056m方向を展望する。
大千軒岳は前千軒岳に隠れて見えない。
手前の頂は・975峰(奥二股沢川源流)。
分水嶺上はササ原に覆われている。
南東側斜面の剥げ地は、所々に発生した表層浸蝕の跡である。豪雪地帯で大きな雪庇が発達し、積雪の移動が表層を剥離させて、植生の回復が間に合わないほど表層浸蝕が繰り返されているのであろう。
東北東方向に馬岳、牛岳、灯明岳、丸岳、長岳、親岳などの七ツ岳山群が見とおせる。遠くに山容が台形のチリチリ川源流にある袴腰岳だ。その向こうに駒ヶ岳も視野の内だ。
知内平野を望む。函館山、当別丸山、庄司山、中野川上流の袴腰岳、横津岳と展望できた。
知内平野を囲む山地は、小さな皺の多い新第三紀層の山々だ。穏やかな気候にあって、往時ブナの美林が随所に見られた領域だ。
最手前の尾根はCo720mの凸で、右に中二股沢川、左に奥二股沢川。
眼下に住川、千軒集落、知内川を挟んで高峯は、三角点奥丸山、左に突出した東莱にある燈明岳。
手前からサカサ川、大川、宿部川、コモナイ川、出石川、東莱川が並んで岩部山地を北流している。
知内川右岸に河岸段丘が発達しているのも手に取るように見とおせた。
福島町三岳の池の岱山526.4m、右端に美谷川の丸山307.6m。最左側はの三角錐のピークは岩部岳へ続く684.7m峰。
三角点:袴腰を抱いてメンバ(撮影sakag氏)
三角点を真剣に探索した。四方向に設置さ
れている内の東側の保護石を発見した。
その保護石を頼りに、アカミノイヌツゲに
覆われた三角点の探索成功した。
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