. 大平山 1190.7m    三角点名 大平山 1190.73m (obira) OOTENGUYAMA→世を挙って之を誉むれども、勧むることを加えず。世を挙って之を非れども、沮むことを加えず。→世間中がこぞってって自分をほめたからといって、それで大いにはげみ勇んで仕事をすることもない。反対に、世をあげて自分をけなしても、そのために、意気がくじけるかといえば、そういうこともない。つまり、かれは、世の毀誉褒貶について心を動かさなかった。
石灰岩の明るい山。

行程】 2008.06.28(土)→函館発(4:00)→大平山登山口駐車場Co130m着(6:40-7:00)→沢を離れるCo450m(7:40)→ヤセ尾根を出て雪崩斜面へ入るCo640m(8:00)→独立標高点810m(8:30)→Co900m(9:00)→Co1050m(9:30)→大平山△1190.73 m(10:00-35→往路を下る。→Co1100m(11:00)→Co900m(11:30)→独立標高点810m(11:50)→Co580m(12:30)→Co400m(13:00)→駐車場着(13:30

三角点】 点名 大平山  種別等級 一等三角点 地形図 室蘭−大平山 緯度 42°38′09.4535 経度 140°08′08.104 標高 1190.73 m (X) -151521.972 m (Y) -9383.506 m 所在地 北海道島牧郡島牧村字泊232林班  選点M31.7.10 造標3.7.6 観測H3.8.11

コースの地形】 黒松内低地帯以南の山岳(標高1000m超)は20座を数えるが、渡島半島の基盤岩が隆起地塊となって高まる山岳は大平山、通称利別岳、太櫓岳、遊楽部岳(見市岳)、冷水岳、白水岳、、乙部岳、大千軒岳、前千軒岳の9座を数える。(それ以外の11座は狩場山域、メップ岳域、駒ヶ岳域、横津岳域の4山域にある)。9座の中でも大平山は、露出している石灰岩が現出する地形と植生の特徴的姿や現象によく現われていて、そのことがらはよく知られている。

↓1000m超の山岳と地質構造(黒松内低地帯以南の山々)

分類 山名 岩石 標高
火四. 狩場山 火山岩類:更新世中期70万〜13万年前 1520
火四. フモンナイ岳 火山岩類:更新世中期70万〜13万年前 1337
火四. 東狩場山 火山岩類:更新世中期70万〜13万年前 1319
深成岩. 遊楽部岳 花崗岩質深成岩類:白亜紀前期-後期1億〜9000万年前 1277
火四. 前山 火山岩類:更新世中期70万〜13万年前 1260
基盤岩. 大平山 堆積岩類主体:ジュラ紀前期-後期:2.08億〜1.46億年前 1191
深成岩. 冷水岳 花崗岩質深成岩類:白亜紀前期-後期:1億〜9000万年前 1175
火四. オコツナイ岳 火山岩類:更新世70万〜13万年前 1170
火四. 横津岳 火山岩類:更新世前期170万〜70万年前 1167
火三. メップ岳 火山岩類:中新世中期-後期:1500万〜700万年前 1147
深成岩. 白水岳 花崗岩質深成岩類:白亜紀前期-後期:1億〜9000万年前 1136
火四. 剣ヶ峰(駒) 火山岩類:更新世後期-完新世1.8万年-現在 1131
火四. 砂原岳 火山岩類:更新世後期-完新世1.8万年-現在 1113
火四. 袴腰岳(函) 火山岩類:更新世前期170万〜70万年前 1108
基盤岩. 大千軒岳 堆積岩類主体:ジュラ紀前期-後期:2.08億〜1.46億年前 1072
基盤岩. 前千軒岳 堆積岩類主体:ジュラ紀前期-後期:2.08億〜1.46億年前 1056
深成岩. 太櫓岳 花崗岩質深成岩類:白亜紀前期-後期:1億〜9000万年 1053
火三. カスベ岳 火山岩類:中新世後期-鮮新世:700万年〜170万年前 1049
深成岩. 通称利別岳 花崗岩質深成岩類:白亜紀前期-後期:1億〜9000万年 1022
基盤岩. 中千軒岳 堆積岩類主体:ジュラ紀前期-後期:2.08億〜1.46億年前 1020
基盤岩. 乙部岳 堆積岩類主体:ジュラ紀前期-後期:2.08億〜1.46億年前 1017
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森林】 大平山の森林は,北限域のブナ林域にあって、さらに石灰岩域の森林(泊川地域)として古くから研究が進められている。特に北大グループによる1958年から近年まで長期にわたる森林の変化をとらえている。大平山の精細を極めた帯状区の調査地は、群落間や個体の消長も含めて注目された(森林の極相の動きをとらえることは、長期にわたることから、特に調査地の継続・管理、や調査者の継承の面で困難なことが多い。しかし大事なことだから、各機関で、多少はあるけれども永久試験地に類するフィールドはある)。大平山の石灰岩の山体とブナ林の生育状態と関連づけて述べていろ事柄がいくつかある。例えば「・・・北西の石灰岩地では、ブナ群落は標高840m、単木的には900mに達する。これは石灰岩による影響と解される。・・・」しかし、私の少ない登山の経験(白水岳、砂楽部岳、袴腰岳(函館)、太櫓岳など)から分かることは、「渡島半島の各山座のブナの垂直的分布・生育状態のようすから見ると、大平山(泊川地区)のブナ林で考察されている”石灰岩地の影響”と解されている事柄は、取り立てて(全く)特徴的なこととは言えない」と言えることである。石灰岩地のブナ林の土壌は、「pHにおいて母岩の影響を受けているだろう」と考える向きも多いけれど、実際、特に化学的性質において、他の酸性岩〜中性岩を母岩とする地域の土壌のそれとなんら変わるものでなかった。地形の位置による土壌の違いの方がはるかに大きいのであった。大平山の石灰岩地の成す植生の特徴は、大面積の「石灰岩岩隙、石灰岩岩礫、雪崩地」などの荒地植生と言われる領域にこそ現われている。森林の領域では、他の地域と大きな植生の違いはほとんどそれを見いだせない。大平山の登山を楽しみながら、そのような印象を持ちました。

標高150m登山口:「保護林」と「大平山高山植物保護対策協議会」の立派な真新し看板が設置されていた。
北海道内の自然環境保全地域等リスは→
・国有林野内部通達による「保護林」の看板はあるが、法律による「自然環境保全地域」を啓発する看板は見あたらないのは不思議だ。ここに何が、如何なる謎が隠されているのであろうか。
標高300m付近の谷間:ガリー状の水が涸れた沢を中・古生界堆積岩の転石を踏んで行く。
肥沃な土壌に立地する大型草本(リョウメンシダ、ジュウモンジシダ、オオメシダ、サカベイノデ、ミヤマベニシタ)の中を進むようにして急登が続く。
標高450m付近で涸れ沢から離れて平行急斜面のブナ林に入る。間もなくツツジ類で特徴づけられる痩せ尾根のブナ林を標高600まで進んで雪崩荒地(高茎草原)に飛び出す。
ヤセ尾根を出て雪崩斜面へ飛び出た標高640m付近。
東西に走る尾根を界に南側の雪崩荒地、北側のブナ林。その間の尾根を帯状にシナノキが埋めていた。
雪崩斜面はガロ沢川に落ちている。
同上の上部:標高800m付近のシナノキの果序の様子。
高茎草原(雪崩荒地)を進む:イブキトラノウの先に泊川上流を見る。
ブナ林皆伐跡地:それと分かる斜面が目に入る。渡島半島にある高蓄積のブナ林のひとつとして知られていた「泊川ブナ林」。
さらに奥のスカイラインはメップ岳方向を望む。
大面積の雪崩地:急傾斜の踏み分け路にザイルが固定されていた。ザイルで歩く道を一箇所に誘導することで、ガリー状の浸蝕を進行させることになる。
高茎草原の様な場合、登山者に自由に行く路を選択させた方が、浸蝕を一箇所に集中させなくて済むと考えられる。
大平山の石灰岩地の成す植生の特徴のひとつ、大面積の「石灰岩岩礫」の創生。
後方に見えるのは雪崩によって起こる表層剥離(根っこ混じりの腐植質の表層が布団捲りのように巻いているのが見える)。前方の裸地は、急斜面の雪崩による下層崩落が起こった。
雪崩荒地植生の全景:
数年おきに繰り返される表層剥離の営みは、樹木の侵入を阻み、高茎草原を維持している様子。
雪崩荒地斜面の中に、低木林に発達しつつある「ヒメヤシャブシ・タニウツギ群落」。低木林の左右には数年おきに表層剥離が起きている「高茎草原」の発達が見られる。
大平山の石灰岩地の成す植生の特徴は、大面積の「石灰岩岩隙、石灰岩岩礫、雪崩地」などの荒地植生と言われるが、ここは斜面上部の様子。石灰岩礫と雪崩地が加わった植生の様子。羊歯のような葉っぱが名前の由来・・・。
足元には石灰岩の露出。ミミナグサのたぐいが開花中。
雪崩斜面の上部は「石灰岩岩礫」になる。いわゆるお花畑の様相。
尾根に近くなると、大平山の石灰岩地の成す植生の特徴、大面積の「石灰岩岩隙、石灰岩岩礫」の領域になる。
尾根直下の崖。「石灰岩岩隙」の領域。ネギとミミナグサとヨモギと・・・。
「石灰岩岩隙」特徴的なせりの仲間。
本峰への尾根。左には笹群落、ハイマツ群落、シナノキ群落、ダケカンバ群落、右側は稜線の南、全体的には雪崩斜面で、岩礫が露出する領域、岩場が露出する領域が見える。
山頂は、石灰岩を狭在し急斜面が発達する地域とうって変わって凝灰岩や礫岩、砂岩の新第三紀中新世の堆積岩になっている。地形は緩やかな山頂緩斜面である。山頂を含めて、宮内温泉付近から大平山〜長万部岳へ基盤岩に新第三紀の国縫層相当の堆積岩が乗っかっていて、何処までも緩やかな稜線が見渡せた。この緩やかな尾根で旧大平山鉱山(石炭)があった(笹生い地の広がりは、炭坑のせいか・・・?独り言)。手前の黄色のベルトはシナノキンバイ。

北海道内の自然環境保全地域等

自然環境保全法指定地
「自然環境保全法」に基づき指定。下記に示すようなすぐれた自然環境を維持している地域。
ア.高山・亜高山性植生(1,000ha以上)、すぐれた天然林(100ha以上)
イ.特異な地形・地質・自然現象(10ha以上)
ウ.すぐれた自然環境を維持している河川・湖沼・海岸・湿原・海域(10ha以上)
エ.植物の自生地・野生動物の生息地のうち、ア〜ウと同程度の自然環境を有している地域(10ha以上)
原生自然環境保全地域
@温根別岳(おんねべつだけ) 北海道斜里郡斜里町〜目梨郡羅臼町S55.2.4指定: ハイマツを主とする高山性植生:立入制限地区なし
A十勝川源流部(とかちがわげんりゅうぶ)北海道上川郡新得町S52.12.28指定: エゾマツ・トドマツを主とする亜寒帯針葉樹林
自然環境保全地域
@大平山(おびらやま) 北海道島牧郡島牧村 674: S52.12.28指定:北限に近いブナ天然林、石灰岩地植生
自然環境保全地域(野生動植物保護地区) (平成19年3月31日現在)
野生動植物保護地区(大平山) 自然環境保全地域(大平山) 保護すべき野生動植物の種類→ (植物)  イチョウシダ、ヤマドリトラノオ、チャセンシダ、アオチャセンシダ、カラクサシダ、ミヤマネズ、カマヤリソウ、ミツモリミミナグサ、オオヒラミミナグサ、コバノツメクサ、カラフトマンテマ、エゾホンバトリカブト、サンリンソウ、ハクサンハタザオ、エゾノジャニンジン、シリベシナズナ、タカネグンバイ、チョウノスケソウ、ウラジロキンバイ、エゾムラサキモメンヅル、エゾノタイツリオオギ、ミヤマウイキョウ、サクラソウモドキ、チシマリンドウ、フナバラソウ、シコタンヨモギ、フタマタタンポポ、オオヒラウスユキソウ、オダサムタンポポ、ナンブソモソモ、オノエスゲ、チシマアマナ、チドリソウ (以上33種)"
←三角点1190.73mにて(昨年までの山の高さは1190.6m):地理院情報→<平成14年度版「日本の山岳標高一覧 ―1003山―」では、 平成3年度にまとめたものを 世界測地系 への変更に伴い更新しました。なお、これ以降の三角点の移転等による標高数値の更新は、随時行っています。このデータの最終更新日は平成20年5月1日です。>
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